2023年12月27日水曜日
あるいは裏切りという名の猫 1
俺の名前はルーベン・リトラー 職業、俳優 映画やTVドラマで欠かすことのできないバイプレヤー※である
※注:和製英語で「(演劇・映画などで)助演者、脇役」を意味する 英語ではsupporting actor(actress)という そう言えば聞こえはいいが、「おそらく一生かかっても主役になれない俳優」と思ってくれてさしつかえない
「あなた、今日のご予定は?」
妻のレニィは超・売れっ子の脚本家である 二流役者の俺がこんなセレブな部屋に住んでいられるのも、妻の稼ぎが(俺よりもはるかに)いいからである 「今日はオフだ」
「あたしは監督と次回作の打ち合わせで午後から出かけます」
「行ってきま~す」 「行ってきます」
「気をつけてね」
結婚して19年、ふたりの子供に恵まれて順風満帆といったところか 「おやじもコーヒー飲む?」 「ありがとう、ブロンソン いただくとするか」 「ねえ、パパ この間から言っている話だけど」 「グウィネスちゃんちの仔猫、あと1匹だけもらい手が見つからないんだって」 「今日も学校の帰りにグウィネスちゃんちに寄ってみたんだ 真っ白でちっちゃくって、すんごく可愛いの」 「ねえ、うちで飼っちゃだめ?」
「ママに訊きなさい」 「え? じゃあ、ママがいいって言ったら飼ってもいいのね」
「そうゆうことだ」 「ママ、早く帰って来ないかな♪」 「デイドラに猫を飼っていいと言ったんだって」 「あの子があんなに必死になってお願いするんですもの ダメだなんて言えるわけがないでしょ」
「ふっ そうだな」 「トライゾン※」という名の仔猫の到来とほぼ時を同じくして、とてつもない「災厄」が我が家に忍びよろうとしていることに、その時の俺はまだ知るよしもなかった
※注:trahison /traizɔ̃ 【フランス語】 1 裏切り、背くこと 2 歪曲(わいきよく)、曲解 今日のブロンソン:わざわざ夫婦の寝室にまで移動してコーヒーを飲むな
「ザ・シムズ3」に登場する中年俳優とその家族を「4」で再現してみました
※参考記事:とあるゲームの人名目録「ルーベン・リトラー」
余談:タイトルの「あるいは裏切りという名の猫」は、2004年公開のフランス映画「あるいは裏切りという名の犬(原題は36 Quai des Orfèvres)」から拝借した 内容は映画とは全然無関係である
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